すーさん’ず日誌

では個人的な感想を。
端的に言えば、「視聴者の対象を把握できない中途半端な映画」でした。

序盤、主人公の兄が殺される一連の流れはシリアスかつ結構エグい。
このテンションで進むのか…　と思ったらところどころに仕込むちょっとしたジョーク。
主人公は兄の死を糧に悪党に立ち向かうんじゃなかったのか。コメディやってていいのか。
1番酷いのは終盤、保安官部隊とインディアンが戦うシーン。
突如降り注ぐインディアンの弓矢で死んだ保安官に対し、上司が錯乱して「隊列を乱すんじゃない！」の一言。
ブラックジョークすぎますよ。ここで笑いはいらない。もっとシリアスにやってほしかった。確かにちょっとおもしろかったけどさ。
後ろの席で見てた馬鹿女がジョークのたびにゲラゲラ笑ってたのがムカツイたのもあるのでしょうけど、真面目にやって欲しいシーンでジョークが多すぎでした。

もう一つ、この映画長すぎです。
なんせ上映時間約3時間ですからね。2時間でまとめられますよこの話。
それもこれも描写が丁寧なせい。
CMでも延々流れていた橋の爆破シーンなんて、わざわざ爆破シーンを写す必要はなかったと思います。
爆発を予想させるシーンは十分にありましたからね。
ラスト、ウィリアムテルの運動会ソングを流しながら列車が猛スピードで駆け抜け戦うシーンもさすがに長すぎです。
ディズニーアトラクション的なアクションも何度もやられるとさすがにくどいです。
そもそも因縁の敵との戦いなんだからふざけてないでさっさと殺せと思ってしまう。
良く言えば丁寧、悪く言えばくどい。
それがこの上映時間に表れています。

そしてその丁寧さやジョーク・ディズニーアクションが子供向けな雰囲気を醸し出しています。
その割には兄を殺される・悪党が容赦なく人を殺すといったシリアスでエグいシーンがあります。あまり子供には見せたくない。
細かい話ですが奇人の見世物小屋や子供に銃を持たせるシーンなんかも、アメリカの過保護な団体は騒ぎそうなものです。

もし、兄が殺されたシーンのテンションでシリアスを貫けば復讐がテーマの大人な西部劇になったでしょうし、
もし、コメディチックな雰囲気を貫くのであれば西部劇の皮を被ったディズニーらしい子供向け映画になったでしょう。
しかしこの映画はそこを中途半端にしてしまった。どの層をターゲットにした映画なのかイマイチわかりかねます。
結果、某掲示板では「ジョニー・デップのご機嫌取りに作った映画」なんて言われる始末。しょうがないです。

と、ここまで酷評ですが、良かった点もたくさんあります。
アクションはディズニーらしさがあって面白いですし、脇役キャラも魅力的。
逆に言えば主人公、ローンレンジャーに魅力がないですけどね
荒野の映像や裏パブの雰囲気が西部劇特有の砂っぽさをうまく表現していて、見ていて楽しかったです。
ラストバトルもウィリアムテルの運動会定番ソングが流れるお陰で否が応にもテンション上げられます。
「映像の面白さ」という観点で見れば流石ディズニーと言った所でしょうか。



【総評】
西部劇を撮れる監督は減ってるという話もありますし、西部劇に挑んだ、というだけで十分評価に値する作品なのではないでしょうか。
映像は美しいので、難しい事は考えず、頭空っぽにして見れば楽しい映画でしょう。
ジョニー・デップの起用と西部劇で膨大な予算が掛かったというこの映画。
大赤字間違いなしらしいですが、ジョニデのご機嫌が取れたならそれでいいじゃないですか。ディズニーお金持ちですから。
この映画で養った英気でパイレーツ・オブ・カビリアンの次回作も頑張って欲しいですね。
私はこのシリーズ興味ないですけど。